かんぽ生命保険は08年度の資産運用方針で、数年後の株式上場に向け含み損を抱えないようリスクを最小限にとどめる見込み。このため価格変動の大きい資産への積極的な投資は考えておらず、引き続き、ALM(資産・負債の総合管理)の負債の特性に合致させる形で国債を中心にした円金利資産の運用が主体となる。
かんぽ生命保険の総資産は、民営化した07年10月1日時点で約113兆円だった。
かんぽ生命保険・運用企画部の運用評価課長、鶴山良徳氏が23日、ロイターとのインタビューで語った。
――今後の資産運用方針について。
「早ければ2010年度の東証への株式上場を目指しており、それまでは資産に含み損を抱えないというのが最優先事項。これまでもリスクを取るような運用は行っていなかったが、民営化しても慎重なスタンスでの運用方針は変えていない。現段階では、積極的に資産運用に取り組んでいく前提として、システム構築や人材の教育などといった体制の整備を進めているところだ。リスク資産を保有していないので、日々のマーケットに反応しての運用も行わない予定」
――円金利資産の投資スタンスは。
「2月末時点の運用状況では、有価証券は全体の78.3%。そのうち国債は62.4%、地方債が3.3%、社債が10.1%、外国証券が2.5%。今後もこの構成比率は大きく変えようとは考えていない。
日本国債への投資は、バランス・シートの負債との年限のマッチングを考え、毎月の償還額を見ながら平準的に買っていく方針を維持する。年限は10年の長期債が中心、超長期債については20年債が中心だ。国債に振り向ける額も、前年度と大きく変わらないだろう。なお、07年度上期の国債の運用額は約4兆円、下期もほぼ横ばいだった」
「10年物の主力商品の予定利率を1.5%として定めているが、このところの相場は10年最長期国債利回り(長期金利)が1.5%を下回る状況が続いており、利差損が出ているので厳しい。今後は、新たな運用対象で穴埋めをする必要がある」
「10年物価連動国債はポートフォリオに組み込んでもいい商品だが、その評価がまだ不透明。場合によっては、年度内の購入はあるかもしれない。15年変動利付国債は多少保有しておりこのまま持ち続ける見込みで売ることはないが、積極的に買っていくことも考えていない」
──円金利資産以外の資産への投資について。
「外国債券は信託で運用していたものを、コスト削減の意味もあり前年11月に本体に移管した。主にドル建て、ユーロ建てで、一部ポンド建てを中心とした運用方針を維持し、残高も大きく変える計画はない。07年度下期は外債を売却する場面はあったが、購入はそれほどしなかった」
「前年12月に金融庁に認可申請が認められ、株式取得や金利先物取引などへの運用範囲が拡大した。そのうち、認可申請前から運用範囲に入っていた信託受益権について制限がなくなり、もっとも取り組みやすくなった。シンジケート・ローンと合わせて、準備が整い次第、できるだけ早く運用を始めていきたい。株式投資に関してはすでに金銭信託を通じて行っていたが、直接投資はシステムの整備や人材の育成が必要なのでやや時間がかかることになるだろう」
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