3月21日、ネット証券大手のマネックス・ビーンズ・ホールディングス(マネックス)は、外為証拠金取引(FX)会社のトウキョウフォレックスの株式90%を取得し、子会社化すると発表しました。マネックスは、トウキョウフォレックスの全株式を保有する東短ホールディングスから14億円で株式を買い取る予定です。
マネックスは、2003年からFXサービスを提供しており、今年2月末時点の口座数は約6.8万口座の規模を有しています。FXサービスを提供する企業のうち、6万以上の口座数を有する企業は数社に過ぎませんので、FX業界におけるマネックスの口座数規模は、それなりに大きいものといえます。
一方、FXにおけるマネックスの取引高は、一日あたり200~300億円に留まっています。FXサービスを専門とする企業では、一日あたり取引高が1千億円を超える水準にありますので、マネックスのFX取引高は決して大きいものとはいえません。
FXサービスを提供する企業の収益源は、FX取引における手数料と、取引における買値と売値の差額(スプレッド)の2つです。どちらの収益源においても、顧客がFX取引をしなければ発生しません。FX取引高が相対的に小さいマネックスのFX事業は、他FX企業と比べてさほど高くないように思われます。こうした点やマネックスが公表したプレスリリースをもとにすると、マネックスがトウキョウフォレックスを子会社化したのは、口座数規模は大きいものの、取引高の拡大ができていないFX事業を梃入れすることを狙ったためと思われます。
ただ、これによって、マネックスのFX事業が、すぐさま拡大傾向にするのは難しそうです。トウキョウフォレックスの口座数は、今年2月末時点で約8700口座と、規模が大きいわけではありません。またマネックスのプレスリリースによると、トウキョウフォレックスの業績は、2007年3月期で5.6億円の赤字となっています。
トウキョウフォレックスの親会社だった東短ホールディングスは、100年近くブローカー業を営んできた老舗企業で、為替取引に関しても多くのノウハウを有しています。このため、トウキョウフォレックスも、為替取引に関して多くのノウハウを有していると思われますが、マネックスにトウキョウフォレックスのノウハウをすぐさま移植するのは難しいと考えたほうが自然です。
昨年8月、11月、今年3月と3度にわたる円高の進展で、FX取引をする個人投資家は、多額の損失を被ったようです。たとえば、FX取引をする個人投資家の収益額を示す「Klug為替指数」は、昨年7月のピーク時から約12%の下落を示しています。こうしたこともあって、FX取引高は、今年に入って、各社とも伸び悩む動きとなっています。
おそらくマネックスも、こうした状況をきちんと理解した上で、トウキョウフォレックスを子会社化し、FX事業の梃入れを狙ったと思われます。マネックスが、様々な障害を乗り越え、FX事業をいかに梃入れするかに注目したいと思います。
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