何かと問題はあるものの、一昔前の完全な「安かろう悪かろう」から「安かろう良かろう」への変化も見えてきた「メイドインチャイナ」は、2008年、ここ五十数年来の最も厳しい冬の季節となった。人民元高、資源価格の暴騰、労働力コストの上昇、これらはメイドインチャイナ、つまり「中国製造」の優位性を喪失するのに十分だった。2008年に、どれほどの「中国製造」の企業が生き残れるのか。
「中国製造」が「大」から「強」へ転換を図るためには、「中国製造」から「中国創造」への転換が最重要課題となる。しかし、中国の最も重要な資本市場としての中国株式市場は現在のところ、「中国製造」から「中国創造」への転換を推進するエンジンの機能は持ち合わせてはいない。
まず、中国株式市場のメインボードに上場する会社は、必ず中国でも真っ盛りの会社でなければならなず、必ず中国の最も強く、大きく、ベテランで、最もみごとに経営されている会社でなければならない。正式な上場基準はともかく、これが暗黙の了解だ。少なくとも設立5年間以上の経歴と、とても強く、安定している収益能力がなければ、中国のメインボードに上場することはあり得ない。
中国のメインボードの敷居があまりに高いので、多くの新興企業、特に民営のハイテク企業は、メインボード上場を実現できず、株式市場からの資金調達、そのルートの確保ができないため、多くの優秀な技術開発成果は、タイムリーに現実的な生産に応用できていない。新興企業用市場「創業板」はもっぱらこの難題を解決するために編み出されたものだ。
メインボードの高い敷居により、中国のベンチャーキャピタルによる資金の流れは、特に中小企業において、断絶した。「創業板」がないと、ベンチャーキャピタル自身にとってもうまみがない、企業も育たない、まことに悪循環だ。かと言って、資金は豊富にある。有効な使い道を絶たれ、無駄に資金が蓄積されている状態である、企業と資金のルート断絶につながっている。
深セン市場には中小企業ボードがある。中国語ではこれも「創業板」という場合がある。そのIPO(新規株式公開)や取引は活発だが、実際にそうではなくても、深センという地域の限定という感がある。今年3月になって、当局は改めて全国規模の「創業板」=「ベンチャー・ボード」創設に向けて動き出すことを表明した。
昨年来、中国の株式市場は活況が続いた。それ以前までに長い低迷期が続いただけに、「すわ、中国は株式バブルか?」とも騒がれた。しかし一転、今年に入ってから上海総合指数をはじめ、主要インデックスは軒並み急落している。絶えず下落しつつある指数と、日々縮小しつつある取引量は、メインボードの衰退を意味するだけでなく、機運が盛り上がりかけた「ベンチャー・ボード」の創設にも、微妙な変数を与えている。
2008年6月前後に「ベンチャー・ボード」を創設するとの声明があった。創設することは難しいことではない。ただし、中国の株式市場全体の現状を顧みないまま強行すれば、創設後の推移は推して知るべし、ということになりかねないだろう。強く、創造的な「製造力」を中国企業に付与するという根本を忘れてはならない。
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