■東証の国際化戦略に影響も
インターネット証券会社が運営する私設取引市場(PTS)が相次いで取引時間を拡充した。カブドットコム証券は、東京証券取引所と競合する昼間取引に参入。SBIジャパンネクスト証券はこれまで午後11時59分としていた取引終了時刻を翌日の午前2時まで延長し、東京株式市場終了後に開く米株式市場と重なる時間帯を2倍の3時間に広げた。海外取引所との株価連動が強まる中、両社の取引時間拡大は、東証の国際化戦略に影響を与える可能性もある。(高木克聡)
カブドットコムとSBIの取引時間変更は、ともに現状の東証の取引サービスに不満を感じている投資家を取り込む狙いがある。
昼間取引は東証の独壇場となっているが、カブドットコムは、株式市場への参加者が主婦や学生などにも拡大し、小口取引を望む投資家と東証のサービスの間にはミスマッチがあると分析している。
東証の取引単位のルールでは、たとえば投資したい銘柄の株価が100万円台の場合、注文値(呼値)は1万円単位でしか受け付けない。これに対し、カブドットコムの昼間取引は、注文値幅を東証基準を下回る単位に設定。100万円台の銘柄でも1000円単位で注文できる仕組みで「取引規模が大きいゆえに小回りの利かない東証を補完できる」((石川陽一執行役)と、投資家の獲得に自信をみせている。
また、昼間の取引開始時間を東証より40分早い8時20分とし、前日の米国市場の動向をいち早く反映させた取引も可能とした。3月31日から取引時間を延長したが、狙い通り「1日の売買がこの時間帯に集中している」(同)という。
一方、カブドットコム以上に海外市場との連動性を重視したのがSBIだ。
同じ米国市場との連動でも、カブドットコムの取引時間帯はあくまで米国市場の前日取引が終了したあとの受動的なものであるのに対し、SBIは米国市場の動きと同時並行して取引できる。
SBIは現在、昼間取引への参入も金融庁に申請中で、グローバルに対応したほぼ24時間の取引サービスも視野に入れるなど、東証補完を踏み越えた市場への発展に意欲を示している。
取引規模のうえでは、SBIの平均売買代金は約10億円(3月実績)と、東証1部の2兆4843億円の1000分の1にも満たない。ただ、米国での企業決算の発表が本格化する中、「米株価が大きく動いた日には、連動するPTS取引も盛り上がりを見せている」(コーポーレートコミュニケーション部)と東証にはない時間帯が投資家ニーズの受け皿となっている。
世界的な景気減速懸念から、米国株の動向への投資家の関心は強まっており、取引規模の優位に安穏としていると、東証の国際戦略はお膝元のPTSに足元をすくわれかねない。
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