関係筋によると、ジャスダックが6月10日に開く株主総会で、大阪証券取引所(8697.OJ: 株価, 企業情報, レポート)との統合に反対している取締役が退任する方向となった。その結果、難航していたジャスダック証券取引所と大証の経営統合問題は、大証が7月にも株式公開買い付け(TOB)を実施し、早ければ2010年にジャスダックとヘラクレスとの市場統合が実現する見通しだ。
大証は、システム一本化についてジャスダックの新経営陣と6月末の合意を図った上で、日本証券業協会とジャスダック株の譲り受けの条件を詰める。ジャスダックとヘラクレスの市場統合の具体策については、大証によるTOBの完了後に設置する委員会で協議していく。
大証とジャスダックの経営統合は、3月24日のジャスダック取締役会で、金融庁出身の藤原隆会長と渡辺達郎取締役(日証協副会長)が中心になって大証とのシステム一本化案を否決したことで迷走した。ジャスダック内部の混乱は「株主の意向を無視する行為」として証券界の反発を受けて、統合推進派の筒井高志社長は反対派の取締役に個別に説得にあたっていたが、現在のジャスダック取締役を改選する株主総会が6月10日に開催される。
ジャスダックは委員会設置会社で、株主総会に諮る取締役候補は、筒井社長を委員長とする「指名委員会」の3人が決める。4月28日のジャスダック取締役会では、反対派の渡辺取締役が指名委員を辞任。これに代わって、統合推進派の川村雄介取締役(長崎大教授)が就任。このほかに中立派とみられている日野正晴取締役(弁護士)が指名委員会の委員となっている。
筒井社長は新しいメンバーによる指名委員会を5月中旬に開く意向。すでに藤原会長は、電源開発(Jパワー)(9513.T: 株価, ニュース, レポート)の監査役に転出することが内定し、関係筋にによると、次期取締役の構成は筒井社長ら推進派が多数を占める見通しになった。
<大証、ジャスダック新経営陣との合意にらむ>
大証は、ジャスダックの新経営陣の体制に注視している。ある大証幹部は「人さえ変わればシステム一本化の合意ができるのではないか」と語り、6月10日に決まる新経営陣との協議に期待を寄せた。その一方で「システム一本化の合意がなければ、株の譲り受け交渉はあり得ない。順序が逆になることはない」とも話し、ジャスダック株の取得比率と買収価格をめぐる日証協との協議については、あくまでジャスダックとのシステム一本化を確実にした後での交渉だとの方針を強調した。
日証協の安東俊夫会長は4月22日のロイターとのインタビューで、ジャスダック株の売却交渉について、6月末までに株数と価格の合意を目指す考えを示した。大証幹部は「そこまでに合意できなければ、ジャスダックが困るのではないか」として、一応の区切りとして意識する構え。システム一本化の合意とともに6月末までに株式譲受の交渉が成立すれば、7月にも大証によるジャスダックTOBが実現する見通しとなっている。
大証幹部は、ジャスダック株の取得比率について「3分の1で否決されては経営に責任が持てない。定款変更のためも3分の2以上は必要だ」として経営権支配のため67%以上の取得を求めている。ジャスダック株は日証協が72.6%を保有し、残りは全国の証券会社が保有している。日証協はジャスダックの経営に発言権を確保するため拠出分は51%近くに抑えたい考えで、両者の認識に隔たりがある。大証幹部は「協会から3分の2の全てを売ってもらわなくてもいいが、全体としては3分の2でないと意味がない」と強調しており、株式の売却比率をめぐって交渉が長期化し、TOBの実施時期がずれ込む可能性も残っている。
<ジャスダックとヘラクレスの市場統合、TOB後に証券界で議論へ>
今後、大証は、ジャスダックをTOBで子会社化した上で、システム一本化の作業に1年3カ月程度かけて完了させる計画だ。すでに大証幹部は「経営統合の次は市場統合だ。同じグループに2つの新興市場があるのはおかしい」として、ジャスダックとヘラクレスとの市場統合の姿をにらんでいる。両市場が統合されれば上場企業の数は1100を超えて、東証マザーズの約6倍の規模で圧倒的な存在となる。
日証協の安東会長はロイターとのインタビューで、大証によるジャスダック買収が完了すれば「新興市場のあり方について考える委員会を立ち上げたい」と話しており、ジャスダックとヘラクレスの市場統合の形態を協議する機関を設置する構想を示している。委員会は日証協かジャスダックの内部に設置し、大証とジャスダックのシステム統合の作業に必要な期間を利用して、両取引所関係者のほか、証券会社、機関投資家、発行体、有識者を交えて議論していく構えだ。
日証協の内部では、ジャスダックとヘラクレスとの市場統合について「2009年10月のシステム統合から1年以内に実現できればいいのでは」との声がある一方で、大証幹部は「できるだけ早くやったほうがいい。別々の市場のままでは本当の統合効果は出ない」として市場統合をさらに前倒しさせる意向を示す。もっとも同幹部は「このあたりは委員会での客観的に考えてもらいたい」として、新市場の発足時期は今後の委員会での議論に委ねる考えを示している。
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