1998年、インドが「シャクティ作戦」と呼ばれた核実験を行ってから、11日で10年がたった。現在のところこれが同国最後の核実験となっていることは、幸いである。
この10年、同国は大きな変革を迎えた。情報技術産業を中心に、急速な経済成長を遂げ、南アジアはもとより、国際的地位を大きく向上させた。
インドは、70年代に最初の核実験を行っている。当時の東パキスタン、現在のバングラデシュ独立をめぐる第3次印パ戦争の直後である。
核開発は米国とカナダの技術協力によるものであり、現在もインドが核不拡散条約(NPT)に参加していないことを思えば、核保有自体が戦後国際体制の大きな矛盾の産物であるといえよう。インド核はその後、パキスタンの対抗的核開発を招き、パキスタン核技術は「闇市場」を経て北朝鮮、イラン、シリアなど現在の核拡散問題の暗い出発点となった。
米中枢同時テロ以降、最大のライバル・パキスタン国内の混乱に際してインドが静観を続けていることは、同国が果たす国際的責任の一端と評価できる。カシミールなど対立は残るが、核実験応酬といった10年前の緊張は鳴りを潜めている。
インドの穏健的外交姿勢は、2003年以降、ほぼ毎年10%に近い成長を続ける経済に負うところが大きい。
成長を加速する直接投資を受け入れるためには、地政学的なリスクを拡大させることは得策ではない。
一方で最近、同国を取り巻く外交環境が複雑さを増していることは注視すべきだろう。非同盟を基軸としつつも、これまでの米国、中国、イランとの関係に微妙な揺らぎが生じている。
増大し続けるエネルギー需要は、中国との「争奪戦」を招き、世界的な資源投機と資源高騰のきっかけをつくった。
核開発をめぐり冷え込んだイランとの関係は、パイプライン計画により従来以上に活発化している。
06年のインフレ率は7.8%。成長に伴う痛みである。貧富の格差や伝統的諸矛盾はいまだ解消せず、マンモハン・シン首相を支える連立基盤の弱さが親米路線の微妙な修正に結び付いたとの見方が強い。
外務省ホームページは、インドが伝統的に多極主義を志向すると評価している。非同盟の大国が開かれた多極主義を貫くための環境を支えることが、日本を含む国際社会に有益となることは間違いない。
日本からの直接投資は最近5年間でほぼ10倍に拡大した。進行中のEPA交渉などを通じ、より安定的なパートナーシップを築くための外交努力をすることが、日本に求められている。
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