インド政府が家族同意のみで脳死者からの臓器摘出を可能にする法改正に着手した背景には、2月にインド連邦捜査局(CBI)などが摘発した大がかりな臓器密売事件がある。事件は、インド人医師8人がネパールや国内の犯罪組織と手を組み、貧しい人々に「仕事を紹介する」とだまして健康診断を受けさせ、本人に無断で臓器を摘出して外国人患者らに移植。約25億円を荒稼ぎした。移植を受けた米国人やギリシャ人らも逮捕され、国際的なネットワークが解明される可能性もある。
「腎臓が一つないけど、売ったの?」
昨年10月上旬、体調不良で病院を訪れたアジェさん(35)は、レントゲン写真を手にした医師の言葉に耳を疑った。
CBIによると、アジェさんはあっせん組織の紹介で、ニューデリー郊外のグルガオンにある医師、アミッド・ブルマ容疑者(40)の診療所に送られた。「内臓が悪く手術が必要」と睡眠薬で眠らされ、意識がない間に手術で腎臓を摘出された。
3週間後、レントゲン写真に驚いて警察に駆け込み、捜査は始まった。1月に共犯の医師5人が逮捕されたが、ブルマ容疑者はネパールに逃亡。CBIに国際手配され、2月7日、地元警察に捕まった。
調べでは、ブルマ容疑者らは96年から臓器密売を開始し、腎臓を約13万円で「購入」。患者の外国人には560万円前後で「販売」した。患者は米英仏やアフリカ各国が中心で、逮捕までに約500人の腎臓を摘出した。
CBI幹部は毎日新聞に「アジェさんに報酬が支払われていれば、事件は今も発覚していなかった。外国人患者も捕まえたことで、臓器あっせんの世界的なネットワークの解明も進むだろう」と語った。
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